新しい内村が生まれた瞬間

先月のサテライト、大分戦。
内村にとってはトップ昇格への「試験」ともいえる大切な試合。
そして去年まで在籍していた大分とのアウェイゲーム。
試合前の選手紹介では大分の選手に負けないぐらい大きな拍手が大勢詰め掛けた大分サポからも沸き起こる。
Ｊ１で低迷する大分はつい数日前、広島から前田をレンタルで補強し、前日のトップの試合ではさっそく出場を果たしていた。
また、その前日の試合にも出場していて、先ごろグルノーブルから復帰した梅崎もその日、相手チームにいた。
今期、大分から愛媛へレンタルされている内村にしてみれば、低迷する大分に前田や梅崎が補強されたという事実はあまり歓迎される話じゃないかもしれない。
実際はそんな背景を考えるタイプでは無さそうだけど、この日の内村は私が見たことの無い内村だった。
何しろ良く走る。
おそらく膝にはまだ不安を抱えているはずなのに、この試合でもっとも気合を見せ付けたのは間違いなく内村。

それまでどちらかと言うと、常に冷静で相手をスピードとテクニックでかわす印象の選手だったのだけど、この日の内村は「熱い」。
おそらく彼を大きな拍手で迎えた大分サポにいいところを見せたかったのかもしれないし、もちろんここで結果を出して何が何でもトップに上がりたい、という思いもあったのかもしれない。
しかし、私の勝手な推測だけど、そういう思いよりも

「ここで結果を出さないと明日が無い」

と追い詰められた者が持つ闘志をこの日の内村には感じられた。

センターライン付近、メインスタンドの前で激しいバックチャージを受けてファウルを獲得する。

　内村が怒った。

早いリスタートをするふりをして大分の選手に激しくボールを蹴りつける。
ちょっと遠目に見ても怒っているのが見て取れる。
あまり褒められたプレイではないのだけれど、私は正直びっくりしていた。
いつもクールな内村がああいう顔を見せるとは。
そしてこの日、内村は攻守に冴え渡り、見事な先取点を叩きだし、早々に交代を告げられる。
大分サポからは「もっと見たい」というブーイング。

試合はその後、大分に追いつかれドローとなったのだけど、追いつかれて不満そうな他の愛媛の選手の中で１人上機嫌な内村。
次の日のラジオ番組から推測するに、「試験」に無事合格し、２日後に行われる２１節札幌戦のメンバー入りを告げられたのかもしれません。

その後、水戸、仙台、福岡と続くトップの試合でもこの日見せた、闘志溢れるプレイを続けてスタメンの座も掴み取り、ついに草津戦で待望の２ゴール。


私はこのサテライトの試合が行われた２００７年６月１０日が新しい内村が誕生した日だと思う。

風に乗れ！うっちゃん。